2012/06/23

掃除機のはじまり

スペングラ電気式真空掃除機特許(No.889823


18世紀中頃からイギリス、フランスを中心に興った産業革命は、私たちの生活に多くの豊かさをもたらした。その中で、カーペットは、1785年にイギリス人エドモンド・カートライトが機械式織機を製造したことで大量生産が可能となり、価格も市民の手の届くものとなったことから多くの家庭で使用されるようになった。カーペットの普及は、住空間における埃や塵の発生となり衛生面で大きな問題となった。1860年前後には、埃を除く様々なアイデアが生まれた。例えば、「吹き込む(No.22488)」A.C.キャレイ、「回転ブラシ(No.24103)」H.デイビス、「回転ブラシ&吸込む(No.29077)」ダニエル・ヘスなどである。
これらの方式から、現在の(電気真空)掃除機が生まれたと言えるだろう。19世紀の終わり頃には、手動によって真空掃除機が製品化されたが、動力としては手動以外に水力、電力が使われていた。しかし、電力で動かすモーターはサイズが大きく、ホテル、デパート、鉄道ターミナル、個人宅の地下室において、吸入口は各部屋に設ける「固定式真空掃除機」か、馬車で牽いて街路に置き各家庭を清掃して回る「移動式真空掃除機」であった。
現在の掃除機に最も近い基本特許(No.739263)は、1905年にケニーが取得している。その後、1908年にスペングラが取得した電気式真空掃除機特許(No.889823)は、いとこのフーバーに売却され、1909年には製品として発売している。
1910年頃になっても、家庭用に手動蛇腹式掃除機が各種製品化されている。これらは電動式に比べて安価であったためで、通販等で販売されていた。1915年頃になると、電気モーターの小型化によって、真空掃除機の主流は電動式へと移っていった。この当時も掃除機の普及を後押ししていたのは、衛生面での意識であった。しかし、ここで問題となったのが、衛生面で公告されても製品のイメージは、モーターがむき出しの無骨なものであり、決して清潔感のある美しいイメージではなかった。
1936年、フーバーがヘンリー・ドレフェスにデザインを依頼して、150型真空掃除機を製品化した。このデザインは、マグネシウム合金とプラスティック使用して清潔感と軽さの実現し、形態のクリーンアップに成功し、販売に貢献した。これは、アメリカにおけるインダストリアルデザインの成功事例である。
日本におけるはじめての電気掃除機は、1931年にGEより技術供与されたものを東芝が製造発売している。

2011/04/09

PDのためのスケッチ心得:その2

写真を写す

デッサンは立体物を見る力を養い、平面上の紙面に表現する力となります。デザイナーにとってスケッチは自身の頭にある立体イメージを平面上の紙面に表現する行為です。と言うことは、スケッチ力とは平面上にある写真から立体をイメージできる力でもあるのです。

学生時代に、スケッチを「写す」行為とともに行ったのが、写真を見てスケッチを描くことです。下のスケッチは3年生の春ごろに描いたものです。マーカーとパステルを使用しています。写真は自分が「これは良いデザインだ」と思えるものを選びましょう。





2011/04/07

PDのためのスケッチ心得:その1

まねることの勧め

「学ぶ」ことは「真似る」ことからはじまります。日本では昔から「写し」と言っていました。海外でも多くの画家は師と仰ぐ画家の絵を複製する行為の中で学んで来たそうです。
プロになってデザイン自体を真似ることは、意匠法に触れることですし、何よりもオリジナリティをデザイナーは大切にすべきであり、あってはならないことです。しかし、ここではスケッチのテクニックを学ぶ上で先人の描いたスケッチを写してみることをお勧めします。

下の二枚のスケッチは、私が大学2年の春に描いたものです。



お手本としたのは、「カースタイリング8号」の「IIDのスケッチ」です。コピーすると言っても、本当にコピーマシンでコピーしたり、トレペでコピーして写してはいけません。あくまで見て写す行為が大切です。
注)IIDとは、International Industrial Design Inc.インターナショナル工業デザイン㈱で、松下電器の子会社として1962年に米国で活躍していた日系デザイナーアラン・島崎を招聘して設立された。

下が、「カースタイリング8号」に掲載されていたお手本です。後に、インターンシップを受けたのがきっかけで松下電器㈱に入社し、デザイン制作に30年携わりましたがその間の私のスケッチテクニックの基礎は、この時のテクニック習得にあります。後に、IIDのデザイナーの方でこれらのスケッチの本物を描いた方にこのことを話して、「いつかお見せしたい」と言ったまま現在に至っています。

今、真似るためのお手本となる本は、下の「sketching」という本がお勧めです。アマゾンの洋書で購入すると日本の書店より少し安く購入できます。



2011/04/05

PDのためのスケッチ復習:その2

円柱パースペクティブ


左右のスケッチを見てどうでしょうか?右はなんだか変?な感じに見えるのは正しい立体認識です。円柱の底面と天面は、二次元上にスケッチで描くと底面の方が膨らんだ楕円になります。垂直の高さも見ている人に近いラインが長く両サイドはそれよりも短くなります。


円柱を見る視点を下げていくと左のように天面の見え方が少なくなります。逆に視点を上げて上から見下ろすと天面は円に近づき、側面はあまり見えなくなります。

以上、当たり前のことですが間違えないようにしたいものです。

2011/04/03

PDのためのスケッチ復習:その1

直方体パースペクティブ

ここまで描いてみて、やはり大切なのはパースを如何に上手く描くかだと思うのです。デザインの場合、最終的には立体として実在させるわけですから、立体物としてだれもが理解できることが大切です。そのためにもっとも大切なのがパースです。
二点透視法、三点透視法については、多くの本やネットでも手法を知ることができると思いますが、私が大切にしたいのは、視覚体感として理解できることです。
もう一度、単純な直方体の椅子を描いて、ポイントを確認したいと思います。


 左右ともにボールペンによるフリーハンドで描いています。左は、等角投影に近い感じ、右はパースをきつめにしてみました。(アップして冷静にみると少しパースが狂っているところもありますが、お許しください。)意図的に、対象物によって、描き分けられることが大切です。
落ち入りやすい、間違えやすい例を描いてみました(少し極端かもしれませんが)。ポイントは、ふたつあります。
①逆パース:消失点が乱れていませんか。
②奥行き方向の位置関係:遠くは狭く見えるものです。
さあ、もう一度、パースをしっかり取るようにしてみましょう。

2011/04/02

PDのためのスケッチ初級・その4

ボールペンと色鉛筆



このスケッチは、ボールペンとサインペン、色鉛筆を使用しています。
私が毎日使用しているBRAUNのシェーバーが左上のものです。見ながら描いてみました。ほんの少しだけリデザインしたのですが、今回は自由曲面をスケッチ上で伝えるために、断面稜線を何本か描いてみました。こうすることで、説明的ですが曲面の構成を伝えることができます。色鉛筆を使用したのは、この断面稜線が見えるようにするためです。
また、左右対称のものを描くときには、半分をしっかり描けば、円形側は史家kり描く必要はありません。その方がかたちもはっきりとします。どこを見せるスケッチであるかを考えて描くことが大切です。
このようなスケッチは、モデルメーカーに説明する時に有効です。いくら図面(今は3次元データ)で表現できていてもモデル職人さんに「こんな完成イメージです」と伝えることはモデルの完成を上げるためと作業をスムーズにするうえでも有効です。

2011/04/01

PDのためのスケッチ初級・その3

色鉛筆で描く

私は、普通の鉛筆で描くことはほとんどしませんが、色鉛筆は使用します。色鉛筆はボールペン程ではありませんが、消しゴムで消すことが難しい画材です。基本の考え方は、デザインにとってのスケッチは上手く描くことではなく、アイデアを記録するということです。ですから、一旦描いたものを消すことは、折角のアイデアを消すことになると考えます。
色鉛筆の色は、濃い目のものを選びます。私は、Ulutramarineを良く使います。その他には、Purple,Violetが好きです。鉛筆はカッターで自分で削りましょう。手先の訓練になりますし、気持ちを落ちつけるためにも大切なことです。(プロとしてよりスピーディに描く場合は電動鉛筆削りもOK)

今回は、Ulutramarineの色鉛筆を使用して、iPadのACアダプターを描いてみました。ボールペンのように滑りはよくありませんが、柔らかな感じは、それに合ったイメージを表現することができます。

iPadのACアダプターの基本形は直方体ですが、稜線のRが大きいので柔らかな造形です。このような形を表現するには色鉛筆は有効です。また、ラバーや柔らかな質感を表現するときには最適です。