2014/01/04

松下幸之助の言葉「これからはデザインの時代」

デザインの世界で語り継がれている松下幸之助の言葉「これからはデザインの時代」については、拙稿『松下幸之助の製品デザインに対する考え方と運営─初期の松下電器におけるデザイン活動に関する研究(1)』(デザイン学研究,2011)で、松下幸之助の考えを真野善一がコピーライトしたものであろうと推定した。真野善一は当時のデザインの置かれている状況の中で、松下幸之助のデザインに対する思いを最大限デザインの開発現場に活かすためにコピーライトしたのであろう。

真野の発言として最も古いものは1960(昭和35)年6月1日の「神代の話のようになったけど社長が羽田に降りたとたんに『これからはデザインや』と言われたという飛行場の話は有名だね。それでかどうかは知らないが、社長から当時の宣伝部の竹岡部長に話がゆき、さらに苗加部長を通して僕のところにきたというわけなんだろうね」である。

その後、いろんな方々によって、伝聞のようにして「これからはデザインの時代」が取り上げられてきた。そして、パン・アメリカン航空機のタラップからハットを持った右手を上げて降りてくる松下幸之助の写真とともに紹介されることが多くなっていった。しかし、この写真は、1951(昭和26)年1月23日発行の社内報『松下電器時報』では、米国への出発風景として載せられている。

事実は、必ずしも内容を伝える上で最適な物語ではない場合がある。

私は、松下幸之助の「これからはデザインの時代」発言はなかったが、この言葉は松下幸之助の考えを言い当てていたものと思う。

歴史はそのときつくられる

歴史は、その歴史が語られるときにつくられてきた。その内容が恣意的であるかどうかは別にして、その内容が聞く側にとって理解しやすいか、心地よいか、で歴史になってきた面がある。

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